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行政が取り組む市民バンドの理想的なカタチがここに。

第10回 ぎふジャズフェスティバル 楽市JAZZ楽団 2018.1.21[sun] at 岐阜市民会館大ホール 青木 遥

 すべてのプログラムが終わって立ち上がり、1100人を超えるお客さまの拍手を受けたときのあの感じは、ちょっと忘れられない。楽しいってこういうことかと思う。1月21日、岐阜市民会館で行われた『第10回ぎふジャズフェスティバル』のクライマックス。ステージにはスペシャルゲストのトランペット奏者大野俊三さん、音楽総監督のサックス奏者野々田万照さん、総勢49人の楽市JAZZ楽団メンバー、さらに夏休みにビッグバンド体験教室を受講した子どもたちも登場し、熱く温かく盛り上がった。  岐阜市民ジャズビッグバンド・楽市JAZZ楽団(以下楽市)は、岐阜市民会館・岐阜市文化センターに拠点を置く“レジデント・ビッグバンド”で、指定管理者である一般財団法人岐阜市公共ホール管理財団が運営している。2008年8月にスタートし、今年が10年目だ。小中学校での出前コンサート、商店街や地域のイベントでの演奏などを行い、岐阜にジャズ・音楽文化を普及させるとともに地域の文化を醸成していくこと、岐阜市独自の地域文化活動として全国へ情報発信することなどを目指している。  大きく分けて二つのチームがあり、比較的経験者の多い『こーもらんつ16』の音楽監督(兼楽団音楽総監督)を務めるのは、熱帯JAZZ楽団などで活躍する岐阜市出身・在住のサックス奏者、野々田万照さん。比較的初心者や学生の多い『こーもらんつ23』の音楽監督は、岐阜を拠点とするサックス奏者、粥川なつ紀さんだ。下は中学生、上は70代まで老若男女さまざまなメンバーが集まっている。昨年度からは、20歳以下のメンバーを中心とする『こーもらんつU-20』も、こーもらんつ23から独立して演奏している。“こーもらんつ(Cormorants)”とは英語で、ぎふ長良川鵜飼で活躍する“ウ”のことだ。  年間で最大のイベントが冬の『ぎふジャズフェスティバル』だ。記念すべき10回目の今回、スペシャルゲストには岐阜市出身でグラミー賞を2度受賞したトランペッターの大野俊三さんをお迎えした。一点、昨年までと大きく違っていたのは、粥川さんが出産を控えているため欠席となったことだ。  1部は粥川さんが指導するチームのステージ。これまでは粥川さんがMCを担当していたが、今回は各パートリーダーが順に務め、ぎりぎりまで粥川さんの指導で繰り返し練習してきた。最初にアルトサックスの柴田憲一郎さんがサックスメンバーを順に紹介するが、皆堂々としている。そこにはこれまで野々田さんと粥川さんが繰り返し伝えてきた“エンターテイメント”の精神が生きている。例えばソリストには「絶対にステージで走らない」「終わったらきちんと礼をする」などが徹底して指導されてきた。特に圧巻だったのは♪Spain。みんなが難しいソリのフレーズを吹く姿からは、先生不在でも「このステージをつくりあげよう、いいものにしよう」という気持ちが音と一緒に伝わってきた。  続くこーもらんつU-20は、決して簡単ではない曲も、長く在籍するメンバーがリードして華やかに仕上げ、次々と出てくるソリストが落ち着いて決めていく。聞けば、秋ごろにはまだ不安な部分が多かったものの、そこからの伸びがすごかったそうだ。兄弟でのソロバトルや、プロ顔負けの高3のドラマー、栗田 州くんのソロなど見どころもつくった。ステージから透けて見える若者たちの成長は、岐阜の明るい未来につながっている気がする。  2部はゲストステージ。大野さんの音は誰の心にもすっと入ってくるようで、ジャンルを超えるというのはこういうものなのかと思った。野々田さんとのコラボでは、この日冒頭から総合MCとして軽快に飛ばしていた野々田さんが「緊張しています」と漏らす場面も。しかし普段とはまた雰囲気の違うソロで会場を沸かせ、ここでしか見られない共演に会場も大いに盛り上がった。  3部。こーもらんつ16では毎年“アイドル化計画”と称して、メンバーひとりをフィーチャーした曲を演奏している。今回は結成時から在籍している、テナーサックス加藤徳修さんとトランペット久富慎太郎さんの二人が選ばれた。ソロを聴いていると、この10年が次々と思い出された。 他の曲でも多くのソリストが演奏したが、皆、練習のたびに前回よりレベルアップさせながら本番を迎えていた。見えないところで努力を重ねる意識を共有できる、自慢の仲間だ。  合同演奏の1曲目は、今年度制作された楽市オリジナル曲♪夢幻~信長と濃姫~ だ。2017年は織田信長公が岐阜に入城し、岐阜と命名してから450年。その年と楽団の節目を記念し、信長公をモチーフにして野々田さんと粥川さんが合作した。曲が始まると、お客さんの食いつきがこれまでと違うのがわかる。粥川さんのソロの部分は、こーもらんつ23のメンバー4人が分担した。サビで4人がハーモニーを奏で始めると、粥川さんの思いが受け継がれているようで心揺さぶられた。  そしてアンコールへ突入。1曲目♪Septemberの間奏で大野俊三さんが再び登場し、ラテンの明るくも渋いソロを響かせた。「うわあ、大野さんと共演しているんだ…」と、感激が心に広がった。曲の最後には野々田さん、大野さんと、こーもらんつ23の安藤智子さん(as)がソロバトルを披露した。また、最後の曲でも大野さんがソロを担当。野々田さんが作曲し、粥川さんがアレンジした楽市のオリジナル曲に参加してくださるのは、また格別の感動だ。子どもたちも加わり、大いに盛り上がった。  これまで毎年1000人前後の方にお越しいただき、年配の方や、ジャズに詳しくない方もリピーターとして応援してくれている。野々田さんや粥川さん、そしてスペシャルゲストの皆さんが、「お客さまが喜んでくれたときが何より楽しい」ということを体感できるところまで、メンバーを連れてきてくれた。  演奏技術も少しずつだが上がり、結成初期にこーもらんつ16で演奏した曲を、今はこーもらんつ23で演奏している。そこには、素晴らしい環境で演奏させてもらっていること、先生方やスタッフの皆さんをはじめ多くの方々に支えられていることへの、感謝と責任感も込められている。この先メンバーが少しずつ変わっても、その精神を受け継ぎながら、さらにお客さまを楽しませ、岐阜を好きになるきっかけにもなれるようなバンドになっていけたらと思う。 第1部  (こーもらんつ23) 1. オープニングテーマ 2. The Jazz Police 3. Secret Love 4. Human Nature 5. Spain (こーもらんつU-20) 1.オープニングテーマ 2.I Love You 3.ルパン三世 ’78 4.Dancing Men 第2部 1. GOING HOME 2. NIGHT OF THE HAZY MOON 3. NIGHT IN TUNISIA 4. Alone, Not Alone 5. MUSASHI 第3部 1. オープニングテーマ 2. Alianza 3. Song For Bilbao 4. A Song For You 5. Cubauza 6. Not Yet 7. Strike Up The Band 合同演奏 1.夢幻~信長と濃姫~ アンコール 1.September 2.Dear Cormorants 第1部 楽市JAZZ楽団 こーもらんつ23、楽市JAZZ楽団 こーもらんつU-20 第2部 大野俊三カルテット 第3部 野々田万照&楽市JAZZ楽団 こーもらんつ16 楽市JAZZ楽団音楽総監督、こーもらんつ16音楽監督:野々田万照 楽市JAZZ楽団 こーもらんつ23(U-20含む)音楽監督:粥川なつ紀 楽市JAZZ楽団 金管楽器講師 トロンボーン:照喜名俊典 トランペット:竹岡淳 楽市JAZZ楽団 サポートメンバー アルトサックス:平井尚之 トランペット:酒井潔 パーカッション:荒川“B”琢哉 MCアシスタント:西村知穂 楽市JAZZ楽団 こーもらんつ23(△はU-20兼務) アルトサックス:柴田憲一郎、長谷川まおり、安藤智子、△西川遥音、△長田明莉、△堀はるな テナーサックス:細江真理、山本貴彦、△野々田一生、今井滋行 バリトンサックス:早矢仕美穂、△⻆田和歌子 トランペット:横井達夫、長崎幸雄、△関谷雄太、△丹羽梓、△松波亜耶、△細田瑛麗奈、△畑野柊 トロンボーン:大森恒司、森田彩愛、中島茂人、豊嶋康彦、山田哉、△牧野夏帆 ギター:矢野宏直、△野々田脩生 ベース:高田敏実、加藤圭悟 ピアノ:早兼明子、日野志穂 ドラムス:△栗田州、△小森未晴 大野俊三カルテット 大野俊三(tp)、近藤有輝(p)、北川弘幸(b)、猿渡泰幸(ds) 楽市JAZZ楽団 こーもらんつ16 アルトサックス:犬飼嶺、青木遥 テナーサックス:加藤徳修、細江真理 バリトンサックス:松下雄紀 トランペット:久富慎太郎、大谷縁、杉野正和、△丹羽梓 トロンボーン:大橋暁、鬼頭慶多、加藤昌宏、竹中謙仁、藤島真也 (リズムセクションはこーもらんつ23と共通) 青木 遥: 楽市JAZZ楽団こーもらんつ16アルトサックス担当。楽市結成時より在籍し、神奈川県川崎市に引っ越した後も続けている。現在は東京のビッグバンドでも活動中。








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