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エリントンin台湾!!日本の歌姫と台北ジャズオーケストラの饗宴

Marica Hiraga & Taipei Jazz Orchestra 2017.8.16[wed] at 中山堂[台湾・台北] Naomi Hammer  平賀マリカが日本人歌手として本格的にエリントンの音楽と対峙し、そのキャリアの中で金字塔を打ち立てたアルバム『Sings with The Duke Ellington Orchestra 』。 彼女の“エリントン”に胸を打たれたのは日本のリスナーだけではなかった。  2017年8月16日、台北の中心・西門の中山堂で『Marica Hiraga & Taipei Jazz Orchestra』が開催された。中山堂は戦前日本統治時代に建てられた1500人収容できる大ホール。コンサートは1,2セットとも、インスト2曲を挟みながら、『Sings with The Duke Ellington Orchestra 』全曲をフューチャーするという熱の入れようだ。コンサートを企画し、台湾に平賀を招聘した台北ジャズ・オーケストラのリーダーで音楽監督、李 承育(リー・チェンギ)はこう語る。 「私自身がビッグバンドというスタイルが好きということもありますが、特にエリントンのスタンダードナンバーは創造性の宝庫。最初はアメリカの伝統あるバンドと日本人女性歌手、という時空を超えた組み合わせに惹かれました。さらにアルバムを聴いてみて大きな衝撃と感銘を受けた。ぜひ彼女を招き、自身のバンドで全曲演奏してみたいと」。  台北ジャズ・オーケストラは2009年に結成された台湾唯一のプロフェッショナルとして活動するジャズ・オーケストラ。率いる李は‘96年台北大学卒業後、渡米。ボーリンググリーン州立大学、ノーステキサス大学でジャズを学びサクスフォン修士号取得。帰国後は国立民族音楽研究所、台北教育大学、福建大学などで教鞭を取りながら、台湾各地のジャズフェスやコンサートの企画・運営・出演など、精力的な音楽活動を行っている。バンドの指導・指揮は、台湾在住の米国人音楽家ゲン・エイトキンが担当した。  2階席もある今回の会場はほぼ満席。若い世代の観客が目立ち、インスト曲“Jackson County Jubilee”に続く平賀の登場は大歓声で迎えられた。一曲目の“I’m Beginning to See the Light”はアルバム代表曲のひとつ。早くも「アイ・ラブ・ユー」の歓声が飛ぶ。” Drop Me Off In Harlem“ ” It Don't Mean A Thing If It Ain't Got That Swing“と軽快でスインギーな演奏に客席の視線は釘付けに。インスト曲を挟んで平賀が再登場し、しっとりと”In My Solitude“を歌い上げ、ミディアムテンポの”In A Mellow Tone”へと続く。コンサートが始まる前、李は「どの曲も素晴らしいが、特に” Caravan “はエリントンならではのジャングル・サウンドともいうべき魅力にあふれた一曲」と語ったが、その言葉どおり、自信に溢れた最後の” Caravan “がピークとなって、ファーストセットを締めくった。  一方「セカンドセットは、すべての曲が私にとって難曲」と平賀。だが蓋を開けてみればステージのプレイヤーも観客も、よりグルービーにヒートアップ。平賀がアンコール曲、テレサ・テンの『月亮代表我的心』(月は私の心を知っている)のビッグバンド・バージョンを中国語で歌ったときの拍手と歓声は、怒濤のように会場を揺るがせた。  今回の台湾コンサートの成功のひとつには、エリントン楽曲の魅力をじっくり味わえる構成とそれを活かしきった歌の底力が揚げられる。かつて平賀はこう語ったことがある。「エリントンの楽曲は楽器が勢いづくというか、プレイヤーが乗らないではいられない力がある。インストとして書かれた曲が多いこともあり、ジャズのスキルがないと歌いこなせないクオリティの高さを感じる」。  台湾到着後にすぐに駆けつけたリハーサルと、平賀参加後の翌日のリハとで、サウンドが激変していたことは印象深い。彼女自身がグルーブを生み、バンドのノリを決定づけたことは間違いない。それは歌と伴奏、という関係とはまったく違うグルーブの『台風の目』となってサウンドを率い、引っ張ることができたことでエリントン世界の魅力が充分に引き出されたといえる。  成功のもうひとつの理由は、台湾の人たちのジャズに対する感覚のみずみずしさだ。 「ここ10年ほどの間で、若い世代のジャズに対する関心は非常に高まった。音楽に向き合う学生にとって、あらゆる要素と魅力を持ったビッグバンドで演奏することほど、優れた学びの場はありません。そしてその教育に携わることは、私自身の音楽をより高みへと導いていくことにほかなりません」。と、リーダーの李。  会場にあふれていた大声援と若々しい熱気は、こうした音楽家の熱心で地道な活動の賜物だろう。 「僕の夢がかなった、と李さんに言われたときには涙がこぼれそうになりました。これほどのリスペクトを持って迎えていただいたことに感謝しています。エリントンは私の宝物。新たなアレンジを加え、いつか自分自身のビッグバンドとともに演奏してみたい」と平賀。  日本で“新しい”エリントンが聴ける日も遠くはないのかも知れない。 1st 1. Jackson County Jubilee* 2. I'm Beginning To See The Light 3. Drop Me Off In Harlem 4. It Don't Mean A Thing If It Ain't Got That Swing 5.A Time for Love* 6. In My Solitude 7. In A Mellow Tone 8. Caravan 2st 1. Basietwon USA* 2. I Didn't Know About You 3. In A Sentimental Mood 4. Just A Sittin' And A Rockin' 5. Sophistcated Lady* 6. I'm Gonna Go Fishin' 7. Dance In Harlem 8.Take The A Train Encore When I fall in love 月亮代表我的心





Photo by Naomi Hama



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