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すべてを包み込むのが、ジャズ。

ジャズin 藝大2016 Film Music in JAZZ 2016.07.30[sat] 東京藝術大学 奏楽堂 青木 遥

 「Jazz in 藝大」は毎年夏に開かれ、今回で11回目。会場である素晴らしいホール、東京藝術大学奏楽堂は2階席までほぼ満席。観客は年配の方から中高生の若い年代まで幅広い。オープニングで司会の松下功副学長のトークに温かな笑いが起こり、私は初めてお邪魔したが、「夏の藝大のJazz」が人々に親しまれていることがすぐにわかった。  東京藝術大学ビッグバンドMANTO VIVOは藝大の学生からなり、今回はそこにOBやプロのジャズミュージシャンたちが加わっている。藝大にはジャズ科はなく、普段はクラシックを専攻している学生の皆さんの集まった音には、他のバンドとは違う艶やかな美しさがある。特に、トロンボーンセクションの4人は先日ニューヨークでのコンクールで1位を獲得したとのこと。4人でのハーモニーのパートで、圧巻の響きを聴かせていた。そこに齋藤たかしさんのドラムが加わり、さらにピアノ、ギター、ベース、トランペットなどでジャズのエキスパートが加わることで、紛れもなくジャズのサウンドに仕上げられている。藝大客員教授でバンドを指導し、今回の「ジャズin藝大」のプロデューサーを務めるMALTAさんは、ステージの中央でバンドを指揮しながら、もちろんサックスの演奏も聴かせてくれた。最初は松下副学長とのMCでも「いっぱいいっぱいで話せない」と言っていたのが、後半では「ワーオ!」を繰り返す大興奮。MALTAさんが盛り上がっていく様子が、ステージの熱を観客にしっかりと伝えてくれた。  今回のテーマは「Film Music in Jazz」。数々の名作映画の音楽が演奏された。松下副学長は映画音楽を作曲した際、監督に「ここで泣かせてほしい」と頼まれたことがあるそうだ。「人は音楽がないと泣かない、と気付きました」と、松下副学長は映画における音楽の重要性を語る。観客の多数を占める中高年の方々にとっては、リアルタイムで見た懐かしい映画の音楽が数多くあっただろう。若い観客にとっても、映画を見たことがなくともおなじみの曲が多く、幅広い世代が聞きやすいプログラムになっていた。 原曲から大きく雰囲気を変えて編曲されている曲は少なかった。例えば「名作映画メドレー」では、「シャレード」がスイングのリズムになっているのに気付いたくらいで、あとは「スター・ウォーズのテーマ」でのマーチのリズムも、「ゴッドファーザー「愛のテーマ」」のようなバラードも、原曲のイメージから大きく変わってはいなかった。しかしそれでも、「in Jazz」の雰囲気はしっかりと感じられた。それはビッグバンドという編成だからというだけではなく、ジャズの奏法を用い、ジャズのスピリットを持って演奏されれば、とても幅広い音楽がジャズとしてのかっこよさを持つことができるのだろうと感じた。ジャズというのは自由で、とても幅広いものを包含することのできる、懐の広い音楽なのだと改めて感じた。しかしそれでも、MALTAさんのオリジナル曲「Up High Above The Beautiful Rainbow」でスイングのリズムになると、MALTAさんもよりソロを吹きやすいようだった。この曲は学生へのエールを込めて作られた新曲なのだそうだ。  その学生たちは全編を通して大活躍、ソロも次々と披露された。メンバーは驚くほどイケメン揃い(これは私の主観かと思い、同行者にも確認したが同じ意見だった)。ソロはもちろん、終わって一礼する様子にも個性が表れていて、すぐにでもファンがつきそうだった。 2部のオープニングから2曲には藝大教授のクラリネット奏者、山本正治さんが登場。MALTAさんとは藝大の同級生だそうで、身長も雰囲気もかなり違う二人が仲良く肩を組む、微笑ましい光景も藝大ならではだ。「ニュー・シネマ・パラダイス」では山本さんのクラリネットをフィーチャー。オフマイクで歌い上げる演奏に、クラシック奏者としての矜持を見た気がした。そしてゲストのボーカリスト、ギラ・ジルカさんは、「追憶のテーマ」をしっとりと歌い上げた後、「ルート66」でMALTAさんとの掛け合いを見せながら、会場を熱く盛り上げていた。そして最後の曲で登場したゲストはビブラフォン奏者の浜田 均さん。ビブラフォンでのジャズ演奏を初めて聴いたお客さんも少なくなかっただろう。マレットを両手に2本ずつ握って自在に操り、ソロでのスリリングな演奏に、客席は圧倒され感嘆のため息が漏れていた。そして全編に登場し続けたMALTAさん。学生の力を引き出しながらも、サックスを手に取ると、しっかりとMALTAさんの言葉でうたい、観客に届けてくれた。そこにはもちろん長年の技があるのだが、なによりもっと強く感じたのは、MALTAさんが1曲1曲にピュアに謙虚に向かい合う姿勢と、それを届けることをとても楽しんでいる様子だった。 アンコールでは本日の出演者全員がステージに上がり、MALTAさん作曲の「Jazz Up, Back Up, Dress Up」を演奏。明るいブルースナンバーに観客もさらに盛り上がる。この曲でMANTO VIVOのメンバーは全員がソロを聴かせてくれた。ゲストミュージシャンのソロでは、MALTAさんが近づいていって掛け合いを披露するなど大盛り上がりの中終了した。 ジャズは、すべてを包み込む。さまざまな形の映画音楽が、この日藝大ならではの魅力あるジャズとして奏でられた。ジャズが、さまざまな分野を取り込んで新しい可能性を提示できるということこそが、藝大がジャズを発信する意味であり魅力なのではないかと感じた。  また、多くのファンを持つこのイベントが、藝大を地域社会に開く窓口の一つとなっていることも強く感じられた。次回は松下副学長の言葉にもあった「ビールサーバ」の設置にも期待しよう(この日は近くで隅田川花火大会があり、借りられるサーバーが1台も見つからなかったそうだ。設置できなかったのは「本当に、借りられなかったというだけの理由なのです」と松下副学長は強調していた)。ジャズという音楽がジャズファンだけのものではなく、もっと多くの人に魅力的なものとしてアプローチできる可能性が、大いに感じられるライブだった。 MALTA(Saxophone・Conductor) ギラ ジルカ(Vocal)* 浜田 均(Vibraphone)** 布川 俊樹(Guitar) 三木 成能(Piano) 岡崎 好朗(Trumpet) 鳥越 啓介(Bass) 齋藤 たかし(Drums) 石川 広行(Trumpet) 大石 俊太郎(Alto Saxophone) 藏持 智明(Trumpet) 松永 遼(Trombone) 木村 雅樹(Trombone) 山田 航平(Trombone) AKI マツモト(Piano) 山本 正治(Clarinet/ 東京藝術大学教授)*** Manto Vivo(東京藝術大学ビッグバンド) 松下 功(司会/ 東京藝術大学副学長) Set List 第一部 ミッション・インポッシブル(スパイ大作戦)(ラロ・シフリン) 名作映画メドレー― ハリー・ライムのテーマ(第三の男)(アントン・カラス) ムーン・リヴァー(ティファニーで朝食を)(ヘンリー・マンシーニ) カーニヴァルの朝(黒いオルフェ)(ルイス・ボンファ) シャレード(シャレード)(ヘンリー・マンシーニ) ゴッドファーザー「愛のテーマ」(ゴッドファーザー)(ニーノ・ロータ) スター・ウォーズのテーマ(ジョン・ウィリアムズ) インディー・ジョーンズのテーマ(ジョン・ウィリアムズ) 鬼警部アイアンサイド(クインシー・ジョーンズ) 危険な関係のブルース(危険な関係)(デューク・ジョーダン) 第二部 ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー物語)(グレン・ミラー)*** ニュー・シネマ・パラダイス(エンニオ・モリコーネ)*** 追憶のテーマ(マーヴィン・ハムリッシュ)* ルート66(ボビー・トゥループ)* ひまわり(ヘンリー・マンシーニ) アップ・ハイ・アバブ・ザ・ビューティフル・レインボウ(マルタ) 地下室のメロディ(ミシェル・マーニュ) ジェームズ・ボンドのテーマ(モンティ・ノーマン) ザ・ギット(ビル・ホルマン)** アンコール Jazz Up, Back Up, Dress Up (マルタ) ※全員出演





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