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自由な空間と音楽の可能性

狹間美帆 出光音楽賞 受賞記念コンサート 2014.10.8[wed] Hakuju Hall[東京・渋谷] 松岡美和

 今日は3年振りに「皆既月食」が観測できる日。  会場の渋谷「白寿ホール」に向かう道の途中で、月を写真に収めようとしている人々がいたので空を見上げると、月の一部分が欠け始めている段階でした。コンサートの演奏時間と、皆既月食(レッドムーン)の時間がちょうど重なるという、なんとも幻想的な瞬間をイメージしつつ会場へ向かいました。  第1部は、ピアノ&ストリングカルテット(1stバイオリン、2ndバイオリン、ビオラ、チェロ)の編成。  1曲目「Introductin and Fuga」は等間隔なリズムでピアノの低音部が力強く響き、そこにストリングスのフレーズが合わさって展開していく曲。フレーズの構造(リズム、アクセント)が素晴らしく、1フレーズずつ目まぐるしく変化していくのがスリリングで新鮮です。 また、ピアノが新たなフレーズを弾いて、ストリングスがすぐに同じフレーズで追随したり、その逆でストリングスが新たなフレーズを先導して生み出したり……。これはタイトルにもある「Fuga」の形式。各楽器が各声部を鮮やかに表現しています。  1曲目から狹間さんの魅力がぎっしり詰まっていました。アルバム「JOURNEY TO JOURNEY」の表題曲を聴いた時の衝撃も大きかったのですが、やはり生で聴くと音やアレンジの構造がくっきり見えるのでさらに魅力を感じます。  そして、皆既月食の今日にまさしくぴったりな曲、「月ヲ見テ君ヲ想フ」。 私の勝手な想像ですが、狹間さんが遠く離れた場所で大切な人を想う気持ちを表現したような、本当にうっとりするメロディーです。また、弦楽器のアンサンブルが少しずつ音の厚みを帯びて、内声部分が豊かになり「想フ」気持ちの高まりを感じます。後半のテーマは星をちりばめた、キラキラと光を発するようなフレーズが、儚い流れ星のようでとても印象的です。 ゲストのバンドネオン奏者、JP ジョフレ氏も加わりさらにサウンドに独特な厚みが加わりました。  第2部は、組曲「Space in Senses」(Strings Version)の演奏。狹間さんの世界観と溢れんばかりの芸術性、色彩豊かな音に包まれました。  特に、組曲2曲目の「Parallelism」は、「space(宇宙空間)」を独自の手法で表現されてるのを強く感じます。  ある規則的なリズムを保ちながら、狹間さんがフレーズをのせていくそのフレーズが革新的。最初は連続した音が存在するものの、不規則なパターンを導くために、元のフレーズから「音を間引き」させていくのです。そのようなフレーズは初めての体験です。「音を間引き」するタイミングはこちらが予測不可能なもの。明らかに不規則でありながらとても計算されています。演奏テクニック的にも相当難しいに違いありません。フレーズの中で無音になる部分は不思議な空間として耳に残り、その瞬間がまさにタイトル「space(宇宙)」であり、「新しい星が生まれたり、消えたり」する瞬間に聴こえます。 また、狹間さんのピアノは音色が美しくインプロビゼーションも素晴らしくスイングしていました。 「これからの音楽」としての高い芸術性を、狹間さんの感性の中に感じます。 ジャズ的な和声とリズムの不規則性で「立体感」を現し、曲の「多面性」を表現していて何度も聴き返したい、これからもずっと残っていく作品だと思いました。 コンサートの帰り道、夜空を見上げると美しい月の欠け終わり。 「space(宇宙空間)」を体感した貴重な一夜でした。 Miho Hazama (piano) Momoko Aida (violin) Natsumi Okimasu (violin) Atsuki Yoshida (viola) Yumi Shimazu (violoncello) Masashi Kimura (contrabass) Guest : JP Jofre (bandoneon)

[演奏曲目] 1、Introduction and Fuga 2、Dancing in Yellow 3、Tango Movements 4、月ヲ見テ君ヲ想フ 5、La Guerra 6、Suite "Space in Senses"  1、Pentagram  2、Parallelism  3、Puzzle  4、Interlude  5、Pyramid  6、Ball  7、Big Dipper

松岡美和[まつおか・みわ] アマチュアビッグバンドや自己のユニット「カレイドノーツ」でピアノを担当。





撮影:土居政則

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