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日本発のオールスターバンドが音楽で世界を繋ぐ

BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO with special guest RICHARD BONA 2015.1.9[fri] at BLUE NOTE TOKYO[東京・青山] Naomi Hammer

 弊誌『BIGBAND!』の人気連載コラム「山口ミルコの昨日・今日・明日」のなかで、彼女はかつてこんなことを綴っていた。「私にはエリックが予言者に見えた。救世主だ。音楽で世界を繋ぐ救世主」と。エリック・ミヤシロ率いるブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ、そして今回ゲスト参加したリチャード・ボナ(b)とのステージはまさにこの言葉を具現化させたものに違いなかった。  オープニングはゴージャズな疾走感とド派手なソロバトル、バンドのテーマ曲となりつつある『TRAINS』。リーダー自ら「日本のエリート軍団」と言ってはばからない自信を見せつける一曲だ。続く2曲目はビックバンドならではのスリリングな「決めの妙技」が随所に光るエリック渾身のアレンジ『BEIRUT』。同じくステップス・アヘッドの楽曲。そして3曲目、ジャコの『TEEN TOWN』からゲストのボナが登場。サックス隊の持ち替えによるフルートとクラリネットのサウンドの中、フレットレス・ベースで柔らかく綴られるボナのプレイに早くも観客はスタンディング。同じくジャコのバラード『THREE VIEWSOF A SECRET』では“隠し玉” 佐野 聡のハーモニカとボナのデュオや納 浩一の鎮魂歌ともいえるソロが胸に迫る美しさ。いったんバンド全員が引き上げ、ひとりステージに立つボナ。これはリハーサルにはなかったパフォーマンスだ。重厚なビッグバンドのサウンドと対極にある、スキャットと5弦ベースだけのポリフォニックなインプロビゼーション。バッハを彷彿させるその音世界の輝きと底知れない存在感。みな固唾を呑んで聴き入ったばかりでなく、必ずまた何か起こるという期待で会場ははち切れそうなまま、佳境へと向かう。オールスターズが再度着席、今度はリラックスした雰囲気で『ALL OF ME』を歌ったボナはステージを後にする。オールスターズのソロ対決満載の『LIBERTY CITY』を経て『DOMINGO』へと“ジャコ特集”が続き、納 浩一のソロが始まるや再度ボナが加わって火花を散らすという心憎い演出。そしてアンコール『FANNIE MAE』を加えて全9曲のステージは幕を閉じた。  リハでの話によると来日前、ボナとともに演奏する楽曲はほとんど決まっていない、とのことだった。空港から直行し、眉間にしわを寄せなから初見の譜面を追っていたボナ。今日のこのステージに、そんな彼はどこにもいない。終始にこやかに、まるで柔らかな生糸を軽々と練り上げるように音楽を紡ぎ出し、ユニゾンもパズルが合うようにカチリとキメた。そして彼の参加によってこのエリート軍団にも予想以上の化学反応が起こったに違いない。入念なリハが行われていた難曲『BEIRUT』や『THREE VIEWSOF A SECRET』は、たった一晩ですべてのメンバーの体の奥にまで染み渡って朗らかに歌われ、『ALL OF ME』のようなポピュラーな楽曲であればその余裕がもたらす凄味が聴く者の胸をすく。アレンジの魅力、アンサンブルのダイナミズム、それぞれのソロの迫力、バトルの楽しさ、コラボの華やかさ。どれをとってもビックバンドのもつ魅力全開のステージだった。我々の席からは終始オーディエンスの表情・様子がつぶさに見渡せる。ぽかんと口を開けて一曲目から魂を抜き取られた観客、演奏が終わる度に立ち上がって声援を送る観客、満席の会場はどこも笑顔に溢れた。そのパワーは、今後このバンドをいっそう高みへと導くことだろう。  そういえば2011年の秋、ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンドが来日した際、ボナはそのゲストとしてピーター・アースキンとともに参加していた。しかも「ジャコ・パストリアス」という同じテーマを扱いながら、この2つのバンドの印象は大きく異なる。しいていうなら前者はジャコのファンが大好きな楽曲を取り上げ、その世界を想起させるシーンをふんだんに盛り込んだステージだったことに対し、後者はジャコを知り尽くすボナが、それとは違う自身の音楽を強力に主張したこと、そしてビッグバンドを知り尽くすエリックが「ジャコの狂気」ともいえる部分をその美意識を持って包み込み、オールスターズの全力投球とともにクォリティの高いエンターテイメントにまで昇華した、という違いだったのかもしれない。  ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラは昨年、モントルー・ジャズフェスティバルに招聘され、今年もアジアのジャズフェスティバルに遠征することが決定している。かつて弊誌のインタビューで「このバンドの活動を通じて、日本にもすばらしいミュージシャンが大勢いることを知っていただきたい。そして日本発の優れた音楽を発信していくことができれば」と語ってくれたエリック。 「音楽で世界を繋ぐ」日は、本当にすぐそこまで来ているような気がした。 2nd Set 1.TRAINS 2.BEIRUT 3.TEEN TOWN 4.THREE VIEWS OF A SECRET 5.IMPROVISATION (BONA'S SOLO) 6.ALL OF ME 7.LIBERTY CITY 8.DOMINGO EC.FANNIE MAE Eric Miyashiro(conductor, tp) Masato Honda、Kazuhiko Kondo、Osamu Koike、Osamu Yoshida、Takuo Yamamoto(sax) Isao Sakuma、Shiro Sasaki、Masahiko Sugasaka、Sho Okumura(tp) Yoichi Murata(、Eijiro Nakagawa、Satoshi Sano、Junko Yamashiro(tb) Masaki Hayashi(p) Koichi Osamu(b) Tappi Iwase(ds) Richard Bona(b,vo)

文責:BIGBAND! 編集部





Photo:Yuka Yamaji

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